にちじょう

なにげないひびを、つらつらと

峠で大便したら警察が来た話

 事の発端は、バイク仲間がこのコンロを買ったことから始まる。(自分のバイクはCB400SF、友人のバイクはCBR250RR)

このコンロ、かなり軽量で、だいたい缶コーヒー2つ分くらいのサイズ。”これならバイクでも簡単に運べて、手軽にお湯沸かしたりできる” ということで購入したらしい。

 

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それで今日、初めてコンロを使ってみよう!ということで、”ちょっとバイクで走って、外でコーヒーを飲もう” と誘われた。

最近あまり遠出してなかったし、それならということで、各自ドリップコーヒーを持っていざ出発。

 

目的地は、「山中越」というところ。こちらについては以下が詳しい。

京都府道・滋賀県道30号下鴨大津線 - Wikipedia

 

かなり勾配のある峠で、ギアを落として運転する。平坦な一般道では出ない甲高い音が聞けて、さらに二人とも4気筒だから否が応でもテンションが上がる。

滋賀の夜景が見通せる道を横目に暫く走ると、目的地の駐車場についた。

 

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本当いい景色。暫く眺めていたのだけれど、バイクで走ってきた高揚感もあいまって、もうちょっと景色の良い所へ歩いて行ってみようということになった。

 

・・・登ること数分。何か下腹部に違和感を感じた。チクチクするような、かなり刺激的な感覚である。普段とは違う感覚に暫く脳が認識できなかったのだけれど、徐々にその感覚は強くなっていく。そう、”便意” である。

気づいた時にはもう遅かった。一気に感覚は強まって、歩けないほどになっていた。

(そういえば、駐車場に公衆トイレがあった気がする・・・!)

あまりの便意に走ると漏らしそうであるし、かといって歩いていたら便意に先を追い越され放出してしまうのは自明。その時の僕はさながら競歩選手のような動きであったと思う。

 

トイレに近づくと、その安心感から余計に便意が加速する。

 

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急いでウインドブレイカーとリュックを友人に預け、便所に入りすぐさまドアを閉めようとした、が・・・

この時、あまりに焦っていたことからドアを閉められず、友人に「鍵かけて!鍵かけて!」と叫んでしまった。今から思うと、かなり意味不明である。

 

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(現場の様子です)

 

結局ドアを閉めることなくすぐさまズボンを下ろし、その二秒後・・・。

「ブボボッ・・・ボボボッ・・・!ボッ!」

冬場でかかりが悪いバイクのエンジン音だろうか?いや、大便音である。外から友人の笑い声が聞こえる。だが、それどころではない。

なぜなら、ズボンをおろした瞬間にアレを放出したものであるから、そして、音から察するにかなり勢いがあるものであろうから飛び散りが予想される。

さらに、このトイレにはトイレットペーパーがないのだ。

 

和式トイレの中で座りながら、僕は友人にリュックの中からティッシュペーパーを探してもらうように頼んだ。だがいつまでたってもティッシュペーパーは見つからず、結局尻を拭くものは見当たらなかった。

尻を拭かずトイレを出るだけならまだしも、この後バイクに乗らなければならないので、そうしたら圧力でパンツならずズボンにまでもアレが付着するのは分かりきっている。

申し訳無さを噛み殺して、僕は友人にトイレットペーパーとウェットティッシュを買ってきてもらうように頼んだ。

 

ーーーこの決断が、警察を呼んだのである。

 

けたたましいサウンドが聞こえ、バイクが走り去るのが感じ取れた。

しばらくの静寂。僕はうんこ座りのまま精神を統一した。不運なことに、今日は大学のジムで一時間半もトレッドミル・各種筋トレをこなしたあとであり、腹筋及び脚の筋肉が悲鳴をあげていたのだ。少しでも気を抜けば、それはボットン便所への接触、つまりーーー死ーーーを意味する。

しかし暇でもあったので、気を紛らわすためにTwitterで現状を投稿することにした。

 

*1

 

とまあ、こんなふざけたことをツイートしているうちに、またけたたましいサウンドが遠くから聞こえ、それは徐々に大きくなり、ついに止まった。

安心感が高まり、便器に膝がつきそうになるのをグッと堪え・・・。

 

友人の足音が近くに聞こえ、ドアの上からトイレットペーパーが差し出された。

トイレットペーパーを見た時の感動ったりゃありゃしない。喩えるならば、そう、”実家のような安心感” である。いや、実家の安心感を超えたかもしれない。

感謝の気持ちを存分に込めて、紙で尻を拭う。

見ずとも感触でわかる。これは大惨事である。妥協してそのままズボンを穿いていたら、帰宅後確認した際にショック死、翌日ニュースになっていたであろう。

今日からは寝る方向に気をつけることにした。

 

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無事排便できてめでたい!ということで、本来の目的であるコーヒーを淹れることにした。

本当にコンロは良く出来ていて、実際に見るとこんなにコンパクトなのかと驚くばかりであった。

お湯を沸かす間は、今までの散々な出来事を話し合って笑っていたように思う。

(確信犯的な間違い方)

 

お湯がわいたということで、コーヒーを淹れた。

モノを済ませた爽快感と、ウインドブレイカーを突き抜ける寒さ、そして目に飛び込む景色から、いつも以上にコーヒーが美味しく感じられた。

 

ほっ、と一息ついてタバコに火をつけたのもつかの間、峠の下り方向から赤いパトランプが見えた。そのまま通り過ぎていくかと思われたパトカーは、駐車場前でブレーキをかけ、なんとこちら側に近づいてきた。

すぐさま2人の警官が降りてきて、僕達に話しかけてきた。

 

警察官「走り屋のような方が、この峠を往復しているとの通報があったのですが、何か目撃していませんか?」

僕「いえ、特段そんなことはなかったです。一つあるとすると、ジャガーのスポーツカーが峠を登って行きました。ですがそれほど音はうるさくなく、登っていったきり降りて行くことはありませんでした」

警察官「そうですか・・・、ありがとうございました。お気をつけて帰ってくださいね。」

 

警察官が来ると、悪いことをしていなくても焦るものである。

思わず両手を前に突き出すところであった。

 

警察官が帰った後も、数台のパトカーが峠のパトロールをしていた。

 

コーヒーをすすりつつ、タバコの煙を燻らせながら、友人と今日の様々な出来事を振り返っていた。大便案件だけでも大騒動だったというのに、警察まで来るなんて、と。

と、ここで、友人が「アッ!」と大声を上げた。

何事かと問い詰めたところ、友人が一言。

 

「走り屋っていうの、僕かもしれん」

 

(・・・?)

頭のなかがクエスチョンマークで埋め尽くされる。意味がわからない。

そんな僕を尻目に、頭のなかで全てが組みたてられた後の友人が口を開いた。

 

「しりかげる(僕)がトイレいって、紙がなかったから、僕にトイレットペーパーとウエットティッシュの買い出しを頼んだでしょ?その時、峠だったから2速で近くのコンビニまで行って、その後も2速で帰ってきたのね。」

 

フムフム。なるほど。

だが、まだ僕はなぜ彼が自分が ”走り屋” と認識したのか腑に落ちなかった。

友人は説明を続ける。

 

「コンビニに向かう途中、住宅街があるのね。そこを僕、2速1万回転以上で走ったの。そりゃあ、走り屋と勘違いされるかもしれんね〜」*2

 

合点。頭のなかで全てが繋がった。

CBR250RRの、現行バイクでは考えられない排気音。それも2速1万回転以上、それなら走り屋と勘違いされてもおかしくない。さらに買い出しに行っているから峠を往復することになるし、その点も一致する・・・。

 

そう、全ては、僕の大便から始まったのだ。

バタフライ・エフェクト、とでも言うのだろうか。僕の排便が、警察を呼んでしまったのである。だが、大便は生理現象である。これは不可避の出来事だったのだ。

 

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思い返せば思い返すほどに、恥ずかしさと情けなさ、そして警察に対する申し訳無さが込み上がってくる事件であった。

本当散々であると思うし、一連の流れを見れば、今日がどれだけツイてない1日であったか、運のついていない1日であったかがわかる。

しかし、帰宅後、くまなくズボンと靴を探しても、ウン(コ)はついていなかった。本当のところ、運のついている1日だったのかもしれない。

 

そんなこんなで、僕の体験は以上となる。

最後に、一命を助けられたトイレットペーパーの写真を貼って、この記事を締めくくりたいと思います。

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*1:


インドでトイレを5時間我慢した話 - にちじょう

*2:断っておくが、友人のバイクはノーマルマフラーであり、なんら法律に背くものではありません