小説 / 外部依存 - 3
朝になったという実感はなかった。
まさに朝が来た、という表現がうってつけなほど、いつの間にか朝が来ていた。
朝日が差し込む部屋の中、妹は泣きつかれてぼくの隣で寝ていた。
目は赤く腫れていて、朝日に照らされた目にはまだ光る筋が見える。
初めて、自分の置かれた状況を考えていた。
頭のなかで、言葉がこだまする。
”原因不明の意識障害”
”母さん”
”これからどうすればいい”
”これからどうすれば”
”これから・・・”
そんなことを考えるうち、いつの間にか風景が滲んでいた。
恐怖で、ではない。これは、寂しさなのか。
ともかく、生まれて初めての気分だった。
頼れる人は誰もいなかった。
母親を放っておいて、外にはいけない。
妹を放っておいて、外にはいけない。
時間だけが過ぎてゆく。右下に視線を遣ると、
”15:36”
の文字。
授業中にはあんなに進まなかった時計が、と、僕は一人笑う。どんな顔で笑っていたか、それが笑顔だったかは定かではないけれど。
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ひとまず落ち着いた僕は、友人であるカズキに連絡を取ることにした。
指を首もとに当てると、電話デバイスが空間上に出現した。慣れた手つきで、空中で手を動かす。
しばらくして電話がつながった。
「はい、カズキです-」
「おお、カズキ、そっちはなんとも・・・」
「-ただいま電話にでることができません、御用の方は---」
声が聞けて嬉しかった。
それだけに、その後の落ち込みは大きかった。
人の声が聞きたかった。人と話がしたかった。
無意識のうちに、僕はいつも見ているミュージックビデオのチャンネルを選択していた。
「---」
アナログテレビなら、ここでホワイトノイズでも聞かせてくれたのだろうが、そこに在ったのは、果てしない無音と、黒の画面に白抜きの、飾りのない”End Of Broadcast"の文字だった。
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あとがき
さて、この後の展開をどうするか。
悩むところです・・・。
まえがきで、色々書くのは趣がないと思い、あとがきに変更しました。