小説 / 外部依存 - 2
外部依存第二話です。
いやぁ、小説って書くの難しいですよね。
書き出しはいいのですが、伏線をどうおくか、とか、いつイベントを起こすか、とか、キャラがどう、どこで活きてくるのか、とか。
何かフィードバックをいただけると幸いです。罵詈雑言でももちろん結構です。よろしくお願いします。
では、第二話です。
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学校に到着し、自分の教室に入る。
ドアは自動に開き、視界の右上が緑色に光り、出席が取られたことが確認できる。
極度に効率化された社会の影響は、もちろん僕たちが通っている高校にも及んでおり、一昔前であれば目視ないしは点呼によって行われていた出席管理も、コンピュータとセンサによる自動管理になっていた。
自分の授業がある教室のドアをくぐると、自動的に出席が記録される仕組みだ。
もちろん、これは朝礼の時も同じである。
「また今日も、詰まらない授業が始まるな、フユキ」
そう話しかけてきたのは、同じクラスのカズキだ。毎回クラス変更がある高校であるが、こいつとは一年生からずっと一緒のクラスだ。腐れ縁ってやつかな。こいつとは席も隣だ。
「そうだな、お前と一緒くらいめんどくさいよ」
適当な相槌を返す。
「はいはい」
相手もさらりとあしらう。これも、妹の寝癖姿と同じくらい、日常化された、ある種のテンプレだ。
キーンコーンカーンコーン。
頭の中でチャイムが鳴る。実際は、骨伝導を用いたスピーカーから音が出ているのだが。
「おはよう、みなさん。では朝礼を始めます」
担任の先生が声をかける。
「まずお伝えすることがあります。このクラスのナツミさんが、今朝意識不明になりました。現在社会問題となっている、原因不明の意識障害とみられます」
クラス中がざわめく。
カズキも不安そうな顔で、僕のほうを見る。
僕はといえば、思ったほど、ショックは受けなかった。ニュースでも毎日といっていいほど報道されている問題だし、それが、ただクラスメイトに起こっただけだ。
こう思うと、僕は悲しいほど自分が冷静 -いや冷酷というべきか -であることが理解できた。
いつからかこんな性格になってしまったのだ。
実際のところ、この原因不明の意識障害が僕たちの学校に起こったのはこれが初めてではない。妹のクラスでも、原因不明者が出ている。
結局は、人間は、他人事なんか気にしなくて、いざ問題が自分に降りかかってくる、というときにはおびえるという、なんともしょうがない生き物だな、と僕は思った。
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淡々と進む授業。
まったく、これだけメディアが進化して、いつでも、どこにおいても、インターネットからデータ参照ができる社会なのに、どうして歴史なんぞ覚えなきゃならないんだ。
僕は授業というものに嫌気がさしていた。こんなの、効率が悪いに決まっているだろう。
何度も、視界の右下に表示されている時計に目をやってしまう。
そんな僕の心情とは反対に、時計は一向に進まない。
ある研究によると、人間は、時間を意識すれば意識するほど、時間間隔を冗長に感じるらしい。
意識しない方法といえば、時計を見ない、ということが一番に考えられるのだが、この社会においては、いつも右下に、時計が表示されているのだ。
かといって、コンタクトレンズを外すわけにはいかない。先生が黒板に書いている文字も、僕たちの肉眼では目視できない。
もしコンタクトレンズを外してしまったら、授業は先生が黒板を前にして手を動かしているだけといった、なんとも面白おかしい光景を見るだけのモノになってしまう。
寝るのもダメだ。寝て、視界がブラックアウトしているのを感知すると、その時間はきっかり睡眠時間とカウントされてしまう。
それを感知しても、先生が起こしに来るわけではない、というところが、また厄介なところだ。
授業を聞いていない時間、つまり睡眠の時間がある一定の閾値を超えると、勝手に成績が下げられてしまうのである。たとえ100点を取っても、授業中一定時間夢の中にいたら、成績は3、というふうにね。
まったく、効率化社会万歳だ。
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気づくと外の空はすっかり赤色になっている。
運動場を見やると、グラウンドを走っている生徒が見えた。肉体労働、ご苦労様。
社会が発達しても、体は動かさないと錆びてしまう。なんともアナログな話。皮肉なものだ。
「おにいちゃん、帰ろ~」
その声に、僕は教室のドアのほうを振り向く。
「あぁ、帰ろうか」
家から学校まで、学校から家まで、僕はたいてい妹と行動を共にする。
行き歩いてきた道を帰る。
ミュージックビデオを見ながら帰る、いつも通りの帰路。
いつもどおり。そうなるはずだった。
「ただいまー」
「ただいま」
二人、声を揃えて玄関の扉を開ける。
「お母さん、いないのかな?」
妹がそうつぶやく。
「そうかもしれないな、買い物にでも行っているんじゃないのか」
リビングのドアを開ける。
扉の前のソファに、母はいた。どうやら眠っているようだ。
「こんなところに寝ていちゃ、風邪ひいちゃうよ、お母さん」
妹が母親の体を揺さぶる。
実際のところ、この後、いくら妹が体を揺すったところで、母親が目を覚ますことはなかった。
上の階から、妹の泣く声が聞こえる。
外を見やると、地平線の彼方がかすかに赤いだけで、辺りはすっかり夜になっていた。